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月別アーカイブ: 1月 2005

年始早々、インドネシア・スマトラ島沖地震のニュースに対照的な2つの記録を見ることができた。

記事「インド洋大津波 生死分けた逃げ道選び スリランカ・ヤラ国立公園」(Yahoo! News[産経新聞])によると、現場からの逃げ道はジャングルをかき分けた先の岩山と、川沿いの道だけだった。「高い所か、逃げやすさか – 瞬時の判断が生死を分けた」という。

「津波は濁流となって川沿いにジャングルを駆け上ったからだ。海岸から約三百メートルの岩山から見ると、車が浮き、低くなっている川に沿って津波がジャングルの奥深く流れ込んだ」 と同記事。狭くなっていく水路では水流の速度は増すはずだから、それでなくとも途方もない津波から逃れることなどかなうわけもなかった。 逃げやすいところには水も入りやすい。実に皮肉な結果だ。

対照的に、驚異の目で報じられている地域がある。時事通信社の報道によると、震源からわずか60キロのシムル島(Simeulue)では、住民約65,000人のうち津波による死者は、3日までになんと6人にとどまっている。他の地域の犠牲者数からしても驚異的な生存率だ。

なんでも、同島には「海水が引いたら高台に逃げろ」という教訓が伝統的な教えとして住民の間に語り継がれていたそうだ。 この教訓には「スモン」という名前がついている。「海水が引いたら次には必ず大きな波が来る、という教えが昔からある。・・・ 住民らはこの言い伝えに従い、水が引いた時、すぐに丘へ避難したという。」

大変驚いた。相当な人数がかなり早いアクションで行動できたことになる。
しかも水が引いたときに、疑わず、一斉に。

Wikipedia英語版の「2004 Indian Ocean earthquake」 のページからリンクされているニュースソースによれば、後の世代に教訓を残した、シムル島(Simeulue)を襲った1907年の津波は数千人の死者を出したようだ。それだけに、その教訓へのリスペクトは十分あったかもしれない。それでも、1907年の津波を経験した人なんてほとんどいないだろう。それで突然やってきた類例のない津波にそこまで機敏に対応できるだろうか。事実、島民は適確な行動の対価として命を得たのだ。

各新聞の社説、論説は、およそ「警告・警報の流布」か、「国際的救援」をうたうものばかりだ。本当に論じなければならないのは危険を感じた、あるいは警告を受けた時の人間の行動のあり方ではないだろうか。

教訓:
Speed means secure.
逃げやすいところは攻められやすい。