アーカイブ

月別アーカイブ: 11月 2004

「IT関連の人材」が何かをあえて定義しないにしても、そう呼べる人材が不足しているという感覚は多くの人が持っているようだ。「デキル人いないですかね」「凄腕の人ってどうやって育てるんですか」。あるいは「IT人材の育成ってどうしたらいいですかね」「オープンソースソフトウエア書けるプログラマってどうやって育てるんですかね」と。意見を聞いてくださる方がいることはありがたいが、さてどうしたものだろう。

人材教育?

IT人材育成会社、教育機関は、IT業界で働きたいものの経験がない人間を集め、高額な授業料と引き換えに数年授業を受けさせ、「資格」というシールをペタっと張って人材を「作り」、世に送り出してきた。ところがどうだろう。かつての飛ぶ鳥を落とす勢いも、いまや見る影もない。教材も教師もスタッフもすっかり古びてしまい、卒業生の評判と同期して就職率が激減。特別な成果もミラクルも期待できないため、いまや非常にお寒い位置にいる。

需要の問題?

最近、電車の吊り広告のトピックに、SE、プログラマなどの大失業時代を危惧するものが目に付くようになった。「転職してはいけない。今、あなたはたぶんもらいすぎている」と。なかなか良心的なメッセージだ。雇用促進している会社は、外向けには「不足」といいながら内向きでは「飽和」と言っている。この構造をある程度理解しなければならない。

たとえば、収益を上げている会社がM&Aによる事業拡大というわかりやすい方法をとってくると、拡散の時代から収束の時代への遷移は加速する。そこでは組織の再構築が行われ、バッティングするレイヤーが整理される。もちろん、組織が最適化されると事業は拡大するのでハッピーなわけだ。

そこに「大失業時代」があるとすると、「必要不可欠」ではないレイヤーにもっとも大きな影響があることになる。これまではなんとか仕事のあったのだが、専門性があるわけでもなく、特別伸びるわけでもない、教育会社か企業に「作られた」人材。そのような人たちは「整理」を宣告されると、なぜ自分がそんな目に遭わなきゃいけないのか、さっぱりわからない。また、新たな「シール」を求めて行動する。そして自分を「作ってもらえる」ところを求める。(その新しい「シール」は、「社長」だったりする場合もある)

コミュニケーションスキル?

そんな状況の中、「コミュニケーションスキル」という、IT関連の知識とは関係ないことを教える人たちが現れた。「コーチング」「プレゼンテーションスキル」とかそういうものもこの類だ。IT業界にまともに日本語を話せる人が少なすぎるのは事実なのでありがたい部分もあるが、そうかと言って技術者が修練を怠りつつ口八丁、というのは問題だ。これらは中身あってこそ意味があるものなので、中身の詰まった人間を生産する手段ではない。

突っ込まれるとさっぱりわからない言葉を、さもわかったようにあやつるプレゼンテイターって増えているが、名刺をもらうと「シニアSE」とか書いていたりするから失笑モノだ。言葉遊びで煙に巻くとお金が出てくるほど、ユーザ企業は無知ではなくなってきている。

資格?

「スキルを身につける」という言葉に摩り替えて、ぱっと見てわかる差別化、競争力をわかりやすく身に着けることにエスカレートする。わかりやすい解決策としてもたらされたのが「プロフェッショナル資格」。日本にどれくらいあるんだろう、昔から結構資格マニアっているよね。

しかし、他の業界の「資格」は「免許」の意味合いがあることが多いのに対し、IT業界はそうではない。これを競争力確保という観点では何ももたらさない、むしろ消費者の貯金を食いつぶすだけのものになっていることに早いところ気がつかなければならない。

「試験」にいいところがあるとすると、未知の、特定のテーマに関して十分に勉強する際の習熟チェックに使うという部分だろう。資格試験は、勉強意欲の里程標になってくれるかもしれない。TESTはTESTであってそれ以上でもそれ以下でもない。IT資格、Ph.D、MBA、あるいはどんな資格をとることを目標にしていても、それそのものは自分をその道のプロフェッショナルにしてくれるわけではない。

ある賢い人が言ったんだそうだ。

「資格とかけて足の裏の米粒ととく。

 取るまでは気になってしょうがないが、取っても食えない。」

はっきり言えば私はプロフェッショナル人材を「作る」方法を知らない。もちろん、これまで学校や先生と呼べる人たちから学んでこなかったというわけではない。結局彼らから私が得たものを説明するとすれば、学んだ内容というより、「学び方」ではないかと思う。そこでは自分を習熟者、プロフェッショナルとして「作ってもらう」ことは完結しない。

自分が「そうなる」と決めて前進している人同士が、相互になにがしかの刺激を与えあうのが、成長できるプロフェッショナルコミュニティの姿だと思う。

“As iron sharpens iron, so one man sharpens another. ”

– Proverbs 27:17

広告