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月別アーカイブ: 11月 2006

マイクロソフトとノベルの提携に関する一人ブレスト。

Moglen教授のオープンソースライセンスとの兼ね合いなどを懸念する声もあれば、OSDLのオープンソースの重要性への評価だとか、Redhatの勝利宣言とかもあり、オープンソース関連情勢には大きな波紋を呼んだ。

しかし、この提携はマイクロソフトのオープンソースへの評価を意味しているとは言えないんじゃないか。むしろ、どちらかと言えばリスクが高まったかもしれない。(エンドユーザのリスクについてはもう少し考えたいと思う。)

今回の提携で日本での報道ではあまり表に出ない、重要性のある言葉、それは「相互運用性-interoperabilityのための提携」という部分だ。

欧州はじめ、e-Goverment戦略の中で、相互運用性を確保できる技術でないと採用することに問題があるという声は世界中で高まっている。日本もしかり。それに関してマイクロソフトに対し、もっとも厳しく、かつわかりやすい策を打ってきたのはEU政府だ。このキーワードに関連して、EU連合政府はマイクロソフトの技術の閉塞性に対し、巨額の罰金を課してきた。

この状況はマイクロソフトにとってEUはじめe-Govermentというマーケットを大幅に減じかねない巨大なリスクだ。ここで抜本的に改革されるように見える、かつ、EUの策をおさめるのにつじつまがあうような策を講じる必要があったわけだ。

マイクロソフトは、自社のアドバンテージを損なわず、欧州が剣を収められるような、そう、少なくとも相互運用性を確保できるように見えるスキームはないものかと策を練っていたはずだ。自社のソフトウエアをオープンにする以外の選択肢でなければならない。

こういう問題は、企業戦略の観点からは別に難しくない。敵陣営の適格者と戦略提携し、そこをグルーとして使えばいい。世界史、日本史上でも日本の戦国時代でも良く見られた手法だ。

Linuxディストリビューション会社との提携をグルーの役割とするという戦略として、相手はRedhatではなくSUSEというところがポイントだ。欧州出身という色もあり、欧州でのシェアも高い。しかも、傾きかけた自社ディストリビューションのマーケット拡大の動機もある。(八田氏のいうとおり、結果的にSuSEはばばくじを引いたことになるという観測もあって当然だ。)

実際、この提携は広くオープンソース陣営にとって何か情報拡大を意味するわけでもないし、たとえばGoogleのように開発力の提供を得るわけでもない。Novell SUSEとて、たいした技術提携を得られるわけでもない。むしろ、マイクロソフトに技術力を吸い取られる(5年間で35万インシデントも!)こと、双方向にパテント関連で訴訟しないことなど。

(この提携の存在そのものが、オープンソースソフトウェアにすでにパテント侵害問題があることをNovellが勝手に認めてしまったことになりはしないか?これは調べてみる必要がありそうだ。)

相互運用性のための戦略提携ということは、「オープン標準」策定プロセスにおいて、マイクロソフトの発言力を上げることにもつながるだろう。それを実装する担当としてNovell SUSE、キミががんばれよ、と札束で顔をはたかれたという構図にさえ見えるのだ。

かくして、マイクロソフトは順調に市場を広げ、欧州でのリスクをおそらくは大幅に軽減し、かたや、求心力を失いかけていたSuSEのプロモーターが増えるものの、大してオープンソース側はそれによって何かが伸びるわけではない、というオチではないか、と。

以上、オープンソースソフトウェアとマイクロソフトの構図が大きく変わったわけではなく、むしろリスクが高まったのではないかとの備忘録。